
米大リーグのワールドシリーズ(WS)で、ドジャース連覇の立役者となった山本由伸投手(27)。歓喜の輪の中心にいる姿を誰よりも誇らしげに見つめる視線があった。「人のことを褒めないけど、あの瞬間は鬼の目に涙でした」。そう語るのは、個人トレーナーで「育ての親」ともいえる矢田修氏(66)。シリーズ最優秀選手(MVP)の右腕を突き動かしたのは「野球界の常識を変える」という決意だったと証言する。 【写真】ドジャース・山本由伸がシェルターから保護した愛犬 ■「最後は本人が決めること」 「明日、ブルペンで投げられるぐらいの調整をする?」 ブルージェイズとのWS第6戦。6回1失点で勝利投手となり、「1年間ありがとうございました」と笑顔で話す右腕に矢田氏は声をかけた。「本人は驚いていたけど、第7戦で登板の必要性があるかも、と予感がした」。第6戦は喉の痛みを訴えるなど風邪気味の中での登板だったという。連投に耐えられるのか、不安要素は少しでも取り除こうと考えていた。 宿舎に戻って治療を開始。部屋を出ると午前2時を過ぎていた。投げられると確信したが、「最後は本人が決めること」。数時間後、山本から「(球場への)出発前に治療をお願いします」と連絡がきた。朝からの治療はシーズン中でもなかったが、表情に不安の色はなかった。 球場入り後の練習。矢田氏は「昨日より、素直ないい球を投げている」と感じた。本人も「張りが出ないように投げたら、案外、球がいっている」と手応えを口にしたことから、チームにゴーサインを出した。 読みは的中した。ブルペンでは球を引っ掛け気味だったが、持ち前の修正力を発揮し、九回のマウンドへ。延長戦にもつれ、「1イニングで終わってほしい。まだ行くの?という思いは正直あった。普通は集中力が続かないですよ」。そんな心配をよそに、十一回まで投げ、胴上げ投手となった。 異例づくしのシリーズだった。第3戦の延長十八回、園田芳大通訳から「登板準備を始めました」とLINEが来た。第6戦の先発は決定済み。調整が狂うリスクもあり「冗談やめてよ。行ってほしくないな」。そんな思いを抱えながら、家族席から慌てて駆け付けた。言葉を交わすと本人の腹は決まっていた。結局、登板はなかったが、短時間で体を作った影響もあり、翌日は体の張りもあった。ただ、「原因が明確。すぐに治療し、第6戦への調整はスムーズにいった」と明かす。 ■効率的な力の使い方を探求
あうんの呼吸を見せる2人の出会いは2017年。オリックス入団1年目の山本が、知人を介して大阪市内の矢田氏の接骨院を訪れたことから始まった。
「どんな球を投げたい?」と聞くと「150キロのフォークを投げたいです」と返ってきた。まだ細かった体を触り、出した答えは「投球フォームもトレーニングも全て変えないと無理やわ」。新人選手には厳しすぎる言葉だったが、山本はすぐにフルモデルチェンジにとりかかった。「あの嗅覚は彼の才能。性格も極めて素直で純粋なんです」と笑う。
力まず、効率よく全身の力を球に伝えることに取り組んだ。「彼は人間が持つ約600の筋肉を10%ずつ使おうとしている。そのためには、とんでもない集中力と感じ取る能力が必要。それを毎日コツコツ積み上げている」と明かす。やり投げやブリッジなど独自の練習法で体の動かし方、力の効率的な使い方を探求し続ける。ウエートトレーニングをせずとも、体は年々大きくなり、肘の疲れも長引かなくなった。基礎の反復も怠らず、継続できる能力を兼ね備えてもいた。
■「極限の集中状態で投げた」
山本がまだ20歳前後の頃、オフに筒香嘉智(現DeNA)と自主トレを一緒にするようになったのをきっかけに米大リーグに憧れを抱くようになり、「メジャーに行けますかね?」と聞いてきたという。「そんな気持ちで通用するわけない」と一喝したが、再び接骨院に来た際には「一緒に(米国に)来てください」と話してきた。矢田氏は「とことん行くで」と返したという。夢をかなえてドジャースに入団した後は本拠地のロサンゼルスにいるタイミングで大阪から何度も出張。治療や指導を重ね、成長を見守ってきた。
WS第7戦、最後の打者はバットをへし折って遊ゴロ併殺に仕留めた。「インパクトの瞬間に芯を外して、バットを折ればいい」。オリックス時代、苦手としていた柳田悠岐(ソフトバンク)への対策として2人で話し合い、球威が増す体の動きを磨いてきた。「本人は『最後、何を投げたか覚えていない』といっていたけど、極限の集中状態の中で投げた、集大成の1球だったと思う」。矢田氏はうれしそうな表情を浮かべた。(田中一毅)
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